日本経済の低迷に端を発してか、経営者・労働者双方にとって取り巻く労働環境は悪化の傾向にあるようです。近年多数発生している労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争を「個別労働関係紛争」といいます。
これらの問題の解決に関しては、最終的には裁判ということになります。しかし現実の問題として、これには多くの時間と費用がかかります。
厚生労働省では、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」の施行に伴い、個別労働関係紛争の経済的かつ短期的解決に向けた扉が開かれました。
この法律に施行により、具体的には次の2つの制度が現在稼動中です。
● 都道府県労働局長の助言・指導制度
都道府県労働局長は、個別労働関係紛争(労働争議に当たる紛争等を除きます。)に関し、当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合は、当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができるものとされています。
● 紛争調整委員会によるあっせん制度
都道府県労働局長は、個別労働関係紛争(労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除きます。)について、紛争当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において当該労働関係紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとします。
これらの制度が普及していくのはとてもよい事であることはたしかです。しかし、その後の労・使間の経過がとても不安なのです。
法律では、「事業主は、労働者がこれらの制度の援助を求めたこともしくは、あっせんの申請をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」とされていますが・・・。
平成15年4月より、社会保険労務士に上記の「あっせん」について、労働者もしくは事業主を代理する権利が付与されましたが、本当の意味の「労務管理のプロ」である社労士の役割としては、労使間のトラブルをあっせんまで行かない間に調整することではないでしょうか。